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私の家では何も起こらない

<523回>

好い日和。あまりに多い団体での散策者たち。人には無関心。一人で歩いている私は透明人間になったのか。ぶつからないように避けながら進む。何やら寂寥とした空間が広がる。散歩も早々に切り上げたくなった。人は何を求めて団体で歩くのか。私には理解できない。などと思いながら歩いていたら、分り易いものに出逢った。僕はご主人様を待っている(下に写真有)。「散歩の時間なんだぞ」、何も言わずに喋る犬。無味乾燥な人間達より雄弁なのかもしれません。こんな気持ちの時は、こんな本でも紹介することに致しましょう。恩田陸さんの「私の家では何も起こらない」(2010年1月8日初版第1刷発行、メディアファクトリー幽BOOKS)。

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丘の上にうずくまる野ウサギのように見える屋敷がある。辺りは殺風景な丘が続くだけ。大きな木がいっぽん。ちょうどいい高さの枝がある。ポーチでは小さなぶらんこがゆらゆらと揺れ、台所はとても明るく、気持ちがいい。小さな撥ね上げ戸を開けると地下には貯蔵庫も。本物のアンティークの布の壁紙の居間にはロッキング・チェア。この屋敷を買った作家は「夜、風の音を聞きながら仕事をしていると、世界中に一人きりなんじゃないかって思うわ。なんていうのかな、まるであたしがこの世界を夢見てるんじゃないか、世界はあたしの脳みその中だけに存在するんじゃないかって」と語る。この古い家にはたくさんの人が住み、それぞれの場所にはそれぞれの物語があった。そう、その家は淋しい感じがしない、なんだか人がいっぱいいるような気がする。これは夢、それとも思い出なのだろうか。「世界は人類なしに始まったし、人類なしに終わるだろう」。

私の家では何も起こらないのか、それとも起こるのか。いずれにせよ、本作品は風の強い夜にでも読んでみるのがいいのかもしれません。

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