遠き面影
<506回>
Robert Goddardの作品については、「最後の喝采」以来、紹介しよう、しようと思いながら、そのままになっていた。「ジュニアス書簡集」の特装版を巡る「SIGHT UNSEEN(眩惑されて)上・下」(加地美知子訳、2007年3月15日第一刷発行、講談社文庫)、50年ぶりの同窓会から始まる事件を描く「NEVER GO BACK(還らざる日々)上・下」(越前敏弥訳、2008年7月15日第一刷発行、講談社文庫)も面白いのだが、もう1年以上経ってしまった。今日は、「NAME TO A FACE(遠き面影)上・下」(北田絵里子訳、2009年10月15日第一刷発行、講談社文庫)をご紹介致しましょう。
モナコの造園業者ティム・ハーディングは、彼の会社ジャルディニエラ社の上得意客かつ株主であるバーナバス(バーニー)・トーザーから依頼を受けた。それは、競売にかけられるトーザー家に伝わる指輪の落札で、兄ハンフリー(ハンフ)・トーザーを自分の代わりに助けてやってくれと云うものだった。場所は英国コーンウォールのペンザンス。そこは、ハーディングが末期癌だった妻ポリーと旅行した最後の場所だった(1999年8月11日の皆既日食見物)。
その指輪が競売会場から奪われた。何処かで出逢ったような謎の女性ヘイリー・ウィンターの失踪。バーニーが過去に係わったケリー・フォックストンの死の謎。それらは18世紀のクラウズリー・シャヴェル提督の時代へと、そして、さらに昔の伝説へとハーディングを巻き込んでいく。バーニーの妻キャロルとの情事、財務担当役員トニー・ホワイトブローの陰謀など虚実の世界と歴史的な謎が織りなすミステリーは、モナコの明るい光の中から雨に煙るコーンウォールの影へと 我々を誘い込むかのようだ。
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