やんごとなき読者
前回の「天岩野戸の研究」で、dawn libraryの記事が500になっていた。記念して、本の紹介ブログに相応しい本を選ぼうと思います。宮城谷昌光氏の三国志第八巻も出ましたが、やはり八巻目ではね。そう言えば、「ミストボーン」の最終巻も出ましたね。でも、まだ読んでおりません。色々と考えた結果、Alan Bennettの「The Uncommon Reader(やんごとなき読者)」(市川恵里訳、2009年3月20日発行、白水社)にすることといたします。この本は余裕があれば原文で読んでみたい本です。もし、皆さんも読んだなら、作中のノーマンやハッチングズを気取って、「いかがでしたか」と訊ねてみたいところです。ノーマンの性癖とは全く関係がございません。念のため。
話は、70代後半の女王エリザベス二世がはじめて読書に夢中になってしまったらどうなるか、と云ったものです。
本職中の本職の女王と言われるエリザベス女王が、移動図書館を覘くことがあるのかなんてことは脇に置き、冒頭から何やら面白い。「ジャン・ジュネ」について訊ねられたら、フランスの大統領でなくとも「長い夜になりそうだった」と思うでしょう。私はJean・Paul Sartreの「SAINT GENET, COMEDIEN ET MARTYR(聖ジュネ 上・下 )」(白井浩司、平井啓之訳、昭和46年8月26日発行、新潮文庫)しか読んでいないので、門外漢ですが、同著冒頭に「ジュネは、≪過去追慕主義者(パセイスト)≫という野暮な名で今日呼ばれる精神の血族の縁者である」と書かれています。
そんなことはさておき、ニュージーランド人の個人秘書サー・ケヴィンの「陛下にも暇つぶしが必要なのはわかります」に対し、女王の「本は暇つぶしなんかじゃないわ。別の人生、別の世界を知るためのものよ。サー・ケヴィン、暇つぶしがしたいどころか、もっと暇がほしいくらいよ。暇をつぶすつもりならニュージーランドに行くわ」なんてのは序の口で、女王が読書を通じて様々なことを考え、周りの事象を別の目で見るようになっていく様が、その特異な状況設定と相俟って、新鮮に感じられます。その風刺を効かせた物語の中で、「読書の意味」がシニカルに綴られていくところが何とも言えません。
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