プロバビリティ・ムーン
まァ何といっても、今年は国際天文年。皆既日食もあったことだし、宇宙に目を向けなくてはなりません(我ながら、なんて唐突なことか、笑)。ここ十年ほど日本は、「のぞみ」による火星探査、「はやぶさ」による小惑星イトカワ探査等、少々遠いところに目が行きがちだった。2007年の「かぐや」に続く月探査にもそろそろ注力しなければ、2010年代での有人月面拠点システムの構築がどうなることやら。なんて書くと、David Weberの「HEIRS OF EMPIRE(反逆者の月3-皇子と皇女-)上・下」(中村仁美訳、2009年3月15日発行、ハヤカワ文庫)を紹介すると思うでしょう。「反逆者の月」三部作完結篇にして、コリン・マッキンタイアの息子ショーンと娘ハリエットの冒険を描いた作品は疲れた時にお勧めです。私も強化手術を受けたいな、なんてね。でも、今日は、月は月でも「プロバビリティ・ムーン」をメインにご紹介。
Nancy Kressの「PROBABILITY MOON(プロバビリティ・ムーン)」(金子司訳、2008年11月15日発行、ハヤカワ文庫)、「PROBABILITY SUN(プロバビリティ・サン)」(金子司訳、2008年12月15日発行)、「PROBABILITY SPACE(プロバビリティ・スペース)」(金子司訳、2009年1月15日発行)は迫真の宇宙SF三部作だそうです。月から始まる非現実的な問題は、太陽系、宇宙全域へと広がっていくのでした。
22世紀、人類は、星間スーパーハイウェイとなる古代エイリアン人工物スペーストンネルを発見した。それから四半世紀のうちには、太陽系外へと急速に勢力を拡大していった。そのような中、スペーストンネル#438の先、「世界(ワールド)」と呼ばれる惑星において軌道上物体#7が見つかった。七つの月のうち「タス」と呼ばれる月は人工物であることが判明。人類と同時期に星間進出を果たした異性種族フォーラーとの交戦において有用な破壊兵器となる可能性を秘めていた。
「プロバビリティ・ムーン」では、軌道上物体#7の解明のため、巡洋艦ゼウスが派遣された。名目上は「ワールド」の人類学的調査である。艦上の物理学者たちは解明を進め、事情を知らない人類学的調査チームは、「ワールド」の調査を行う。はたして物体の解明は出来るのか。また、「ワールド」の”共有現実”とは如何なる仕組みなのか。そして、人類学的調査チームが見つけた物とは。
「プロバビリティ・サン」では、前作の調査チームが新たに発見した物が焦点となる。ライル・カウフマン少佐率いる調査団が送り込まれる。確率現象全般に関して確率子という特異な理論を提唱する物理学者トーマス・カぺロ、異文化人類学者にして”超感覚者”マーベット・グラント、前作から登場している地質学者ディーター・グルーバー、宇宙生物学者ミリアニ(アン)・シコルスキなどがチームを形成する。またカぺロの二人の娘アマンダとサティも同行する。
「プロバビリティ・スペース」では、カぺロが誘拐され、その娘アマンダが危険を感じ地球を逃げ出した。カウフマン、マーベットは、大変な事態に陥った「ワールド」へと戻った。その間、軍強硬派のピアース提督がクーデターを起こし、フォーラーに対し過激な戦略を打ち出した。「拡大した三つの次元空間がフロップ転移をはじめたら」なんてことになりそうに。異星種族フォーラー、過激なピアース提督、彼らによって全宇宙はどうなってしまうのか。
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