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宮城谷昌光 三国志第六巻

結局のところ今日は遠出を止めることにした。写真を眺めても、腹を押さえながらじゃ興を冷ますに違いない。やらねばならないこともあるものの、もう一冊紹介することにしよう。宮城谷昌光氏の「三国志第六巻」(文藝春秋、平成十九年九月十五日第一刷)だ。「三国志第五巻」の紹介は昨年の10月だったが、まだ秋の気配が濃くはなかったようだ。今日の東京は曇り。あまり暑くはない。先ほど近所の本屋へ新書の取り寄せを頼んできたが(AMAZONなんぞより、近所の本屋を育てなくてはね)、若干汗ばむ程度であった。前回、「どう動いていくのか」と書いた「赤壁の戦い」が始まる。そして、諸葛亮(諸葛孔明)が表舞台へと登場してくる。

冀州に於いて袁尚を、青州に於いて袁譚を破った曹操は、荀彧の謀画「社稷長久の利」に従って戦略を進める。Miyagidani01袁煕、袁尚を逐って幽州の半分を取り、高幹を破ると、北方の烏丸(烏桓ともしるす)を討伐し華北を全て支配するに至った。官位を整え、丞相の地位に就いた曹操は、その上で劉表討伐を開始する。荊州では劉表が病死し、後を継いだ劉琮は降伏した。曹操は労せずして荊州を手に入れることとなったのである。「…水軍八十万という兵を整えて、まもなく将軍とお会いして呉の地で猟をおこないたい」との書簡を受け取った孫権は、周公瑾(周瑜)や魯粛の言により会戦を決めた。愈々「赤壁の戦い(烏林の戦い)」が始まるのである。

劉表に身を寄せていた劉備は荊州にて諸葛亮に三顧の礼をもって会う。諸葛亮に「この人は無であり空である」と見られた劉備は遂に経略のための師を得た。曹操の荊州討伐を脱出し、孫権との同盟をはたした諸葛亮や劉備の動き、周瑜や黄蓋の活躍、赤壁後の曹仁の奮戦や荊州南部での劉備の南徇と趙雲たちの活躍、まさに三国鼎立前夜である。諸葛亮が描く君子、巨大な奇術によって三国時代が現出することになったのだろうか。

Yoshikawa01ところで、曹操には赤壁の戦い前夜に詠んだ歌がある。短歌行という(「對酒當歌 人生幾何 …」)。政治家、軍人としても優れていたが、長い中国の歴史の中でも文化人としての素養をこれほど持った人はいないだろう。ところで、吉川英治氏の「三国志」(吉川英治文庫、講談社)では第四巻が孔明の巻と赤壁の巻になっている。「他者を棄てて自己を生かしてきた」と書かれる劉備とはまた別の劉玄徳をそこに見ることになる。

<参考>
三国志第一巻
三国志第二巻
三国志第三巻
三国志第四巻
三国志第五巻

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Tracked on Sep 23, 2007 23:57

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