ブラバン
学園祭真っ盛り。時々浮かぬ顔をした奴もすれ違うが、大概の生徒たちは嬉しそうだ。我が家の娘たちはとっくにそんな時代を過ぎてしまった。従って、見に行くこともない。でも、何となくうきうきした気分が伝わってきて、こちらも一駅分歩いてしまったりする。明日から出張なので、一冊紹介しようと思うのだが、ここはやはり、津原泰水氏の「ブラバン」(バジリコ、2006年十月一日初版第一刷発行)だろう。弦バスにエレキベースの他片等(たひらひとし)が語るブラスバンド部の物語。
高校時代の思い出と大人になった彼等の現実が交錯する。ひどく懐かしいような、それでいて現実ではないような不思議な気分。「短六度違いの二つ(の音)が重なると、合っていないはずなのにときどき合っているようでもある」、「ひどく奇妙なんだけど出鱈目とは思えない、なんとも不思議な響き」となったような物語。様々な音楽が流れ、色々な楽器が登場する。80年代前半の青年達の熱狂と当惑。エアチェックなんて言われると、70年代前半の我々とあまり変わらないような気もするが、違うかな(笑)。「なんでもかんでもオール・イン・ワンというのはフレッシャーの奇想というより時代の風潮で、なにしろ王者ギブソンだってスイッチだらけギターを発売していた。…そしてすぐに廃れた」。そう、時代はどんどん変わっていく。人の表面も変わっていく。でも、人の内面はなかなか変わらない。≪オネスティ≫が流れる。
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Comments
む。ブラスバンド関係の方がお書きになったようなんで事実誤認があるようです。
ギブソンのスイッチたくさんのギターとはギタリストレス・ポール本人が愛用するレコーディングというモデルだと思いますが、これはまったく売れてなかったはず。ちゅーかレス・ポール御大自身「ワタシ以外使う人がいないねー。人気ないねー。ガハハハ」と笑い飛ばしているギターで、高級だけど「ビザール」なギターといったカンジの存在。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~guitar/g0137.htm
確かにグループサウンズが流行った頃は国産ギターのフレッシャーを代表とするスイッチばしばし、エフェクター内蔵、それどころかアンプとスピーカーまでついたギターなどが売られていて人気があったと思いますが(オレもお店でそんなギター何本か弾いたことがある@70年代終わりから80年代)、レス・ポール・レコーディングとはまったく別の歴史の流れにありますです。
ちなみにエレキギターの至宝、1958年製-1960年製のレス・ポールスタンダードというモデルは時価数千万円から億行きます。豪邸を肩からぶらさげるようなもんですね。そんなギターをがしがしステージで使い倒していたアイルランド人の鬼弾きギタリストゲイりー・ムーアは借金苦で泣く泣く愛用のレス・ポールを売り払ったそうです。
(^_^;)
http://www.maverick-music.com/scripts/vintage-guitars.asp?idproduct=1211
Posted by: koolpaw | Oct 01, 2006 01:55
koolpawさん、おはようございます。
やはり詳しいですね。是非一度「ブラバン」を読んで頂いて、さらなる解説を期待したいところです。なんてね(笑)。早速に本屋の回し者でした。dより
Posted by: dawn | Oct 01, 2006 08:24