魔術師エベネザムと不肖の弟子
■Craig Show Gardnaerの「A MALADY OF MAGICKS(魔術師エベネザムと不肖の弟子)」(冬川亘訳、ハヤカワ文庫、2006年3月31日発行)
今年は花粉症がやはり軽い。気楽に出歩けるのも、そのお陰である。根津神社に寄ったと書いたが、その際、行きつけの鞄屋にも顔を出し、出張に丁度良さそうな品を手に入れた。これで本も大量に詰め込める。未読の本が溜まっている。恩田陸さんの「チョコレートコスモス」、飯嶋和一氏の「黄金旅風」、加藤廣氏の「信長の棺」のほか文庫本多数。イヒイヒイヒ、出張が楽しみだ。さァてと、長旅の魔術師エベネザムと不肖の弟子ヴァント坊。何と言っても、エベネザムはアレルギーでクシャミが止まらないのでした。同病相哀れむとか言いますが、他人の不幸を読むのはねぇ(…いいもんだ。おっと、あくまでファンタジーだからですよ)。【(注)と、ここまで書いて本郷界隈へと飲みに行っていた。やっぱり、前書きが長過ぎたのだ(ウィ)。本日中に書けるかな(笑)。】
問題は魔術師エベネザムとデーモン鉤爪庵ガックスクスの戦いの最中に起こったのだった。その戦いがねぇ、エベネザムが「そなたの魔力がもしその程度の詩歌によって強くなるなどということになったら」「この宇宙には正義はない」「すくなくとも詩的な正義というやつはな」とか言い、ガックスクスが「したれども、デーモンをばかにするかや森のなか、月もない夜もあるといわなくに」(これが詩歌か、酷い!まさか「しのぶれど色に出にけり我恋は物や思と人の問迄」とか「誰をかもしる人にせむ高砂の松もむかしのともならなくに」なんてものを捩った訳じゃないでしょう、笑)なんて叫ぶと云うようなものなんだけどね。その結果、エベネザムにとって「魔法に関係するものはすべて、たちまちくしゃみを引き起こすのだった」と云うことになってしまったのだ。ご愁傷様でした。
と云う訳で、「合理的な判断こそ大切である」と云うことに相成った。「わしと同じくらい偉大なべつな魔術師を捜しあてるしかない」とか言って、旅に出たのですね。「一千の禁断の悦楽の都、ヴァシタ」へと。後は野となれ山となれ、刺客は来るわ、ドラゴンは来るわ、大男は来るわ、「べちょべちょ」とトロルはわめくわ、なんて所で「エベネザムの顔はいまや奇怪な赤紫色だった。…師匠にはもうくしゃみをこらえることができなかった」のだなんてことになる。もう知らない。そんなこんなで、弟子は思う。「ぼくの人生はフェローナを含むものへと大きく成長したのだ。いや、過去にも何人か女はいたが…」なんて妄想を。
さてはて、物語は読んで頂戴。書くのも疲れるのだ。ただ、『エベネザム心得帳』にはなかなか示唆(笑)に富むことが書いてあることだけは言っておこう。例えば、「民間にも“夜明けまえの闇がもっとも暗い”とか…それに類することわざは多い。(途中大幅に省略)優秀な魔法使いをして言わしめれば、状況はつねにはるかに悪化する場合があるのである」だとか、「自分の癖を動物の習性と比較して批判される場合がある。これは明らかに、動物に対して失礼である。(途中略)選挙事務所を運営するリスを見たことがおありだろうか」なんて、これはまさに魔術師の心得帳じゃないだろうか(そんな訳ないよなァ、だってねぇ、I君、笑)。
まァ、何だか知らないが、三部作なんだそうだ。1986年に発表された作品だそうだが、今でもくだらなくて好いかもしれない。楽しみにしていよう。ところで、魔法と言えば、我が家にも古い魔法の本がある。坪田譲治氏の「魔法」(健文社版、昭和10年7月5日刊)。「魔法て何さ。」、ヘンドレックなら言うだろう。「ダ、ダー、ドゥビドゥバー、ダ、ダー」とかつぶやいたのち、「運命だ!」とね。いやはや、参ったね(笑)。そうそう、魔術師は雄弁である。ご注意あれ(笑)。
【参考】坪田譲治名作選
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