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侵入社員

■Joseph Finderの「PARANOIA(侵入社員)」(石田善彦訳、新潮文庫、平成十七年十二月一日発行)

先週は4日から賀詞交換会の連続。経団連やレコード協会などご挨拶が一遍に出来て有り難い。金曜日の賀詞交換会では三井物産戦略研究所の寺島所長の講演が聞けた。その中にお得意の大中華圏の話があった。しかしなァ、寺島氏の示した統計数字も表面的な捉え方を補完するに過ぎない部分が多いようにも思える。

私は企業行動の基盤は「人」だと思っている。これは複雑なのだ。しかし、これじゃ行き過ぎだよと思いつつ、でも面白かったのが「侵入社員」である。原題は「PARANOIA」。ちょっと!確かに表面上は「侵入社員」でも可笑しくないのだが(出来れば、4月発行が良かったのではないだろうか、笑)、微妙なニュアンスがなァ、吹き飛んでいるような気がしないではありません(なんて、あんまり話してると、ネタがばれるか、笑)。

paranoia02普段は本格的なスパイ小説が好みなのだ。本格的なスパイ小説と言えば、Ken Follettの「Eye of The Needle(針の眼)」もそうだった。ところが、その「THE PILLARS OF THE EARTH(大聖堂)」(矢野浩三郎訳、SB文庫、2005年12月27日初版発行)は全くスパイものではない。艱難辛苦を乗り越えて…てな物語でありまして、Charles Palliserの「THE QUINCUNX(五輪の薔薇)」(甲斐萬里江訳、ハヤカワ文庫、2003年3月15日発行)みたい。どちらも話が長いんだ(「大聖堂」は3巻、「五輪の薔薇」は5巻)。でも、読み始めると止められないのが困りもの。Ken Follettには、たまにはスパイ小説も書いてもらいたいものだ。おっと話が脱線している。

paranoia01話を戻すと、「侵入社員」、これはこれでよろしいのではないでしょうか。なんせ帯に「この小説に登場するすべてのスパイ技術は本当に存在します。…」(著者)なんて書いてある。カバーには「ハイテク企業に勤務するアダムは、いわゆるダメ社員。…遅く出社、早く帰宅がモットー。ある日、友人の退職パーティを企画するが、経費は会社のコンピューターを不正に操作して捻出する。しかし、それがバレて上司から厳しい選択を迫られる。横領罪で55年の服役か、ライバル会社にスパイとして入社するか。アダムはこの窮地を切り抜けられるか?」と書いてある。ここまで読めば、判りますよね。アダムはライバル会社へスパイとして潜り込むんですな。

まァ、それから先がどうなるかは話しません。それにしても、アダム・キャシディが勤めてたワイアット・テレコム社ってのは酷い会社だ。「(レオオフはやるわ、解雇宣告はやるわ)、その一方では、…役員たちは、専用のリアジェットでサンバルテルミ島に飛び、会社の所有する別荘で妻やガールフレンドたちとベットをともにし…」うんぬんかんぬんなのである。そうそう、スパイに出て行くアダムに友人のセス・マーカスが言う言葉がイカしてる。「なあ、おまえ、子どもにもどるのに遅すぎる、なんてことはないんだぜ」。そうだ。大人になったら(いや、最近は大人にならなくとも)、「“科学は金を追いかけ、金は金を追いかける……”」なんて言わなきゃならないんだ(六本木辺りでは金ばっかりかな、笑)。

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Comments

和製「ワイアット・テレコム社」があちこちに生まれてきているようですね。なんだか、「金が金を追う」時代になってきましたが、なかなか心情的にもなじめません。

Posted by: 大西宏 | Jan 12, 2006 at 10:51

大西さん、おはようございます。
金は天下の回りもの、追いかけたってしょうがない、なんて思ってる人の方が少なくなった日本は何処か変ですね。dより

Posted by: dawn | Jan 13, 2006 at 08:41

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