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五郎治殿御始末

■浅田次郎氏の「五郎治殿御始末」(中公文庫、2006年1月25日初版発行)

しまった。止まらなくなってしまった。原稿を書いていても指がむずむずする。犬の散歩にも出掛けなくてはならない。階段の下で何やら気配を感じるのだが、書き出すと止まらないのが悪い癖。5時半までに10分程あるではないか、なァ、我が愛犬よ。とか言って、最近、ご紹介したい作品が溜まっていて困っているのでありました。

asada02男の始末はしきたりでもなければ、道徳でもない。それは男の信念であり、矜持である。「今さら無用の長物となってしまった和算と暦法の学問を究めたのは、科学者として人々の平安を希うがゆえであった」成瀬勘十郎(「西を向く侍」)に諦めはあるものの、虚しさはない。

「函館証文」の大河内伊三郎、「椿寺まで」の三浦小兵衛、「遠い筒音」の土江彦蔵、「柘榴坂の仇討」の志村金吾、そして、「五郎治殿御始末」の岩井五郎治、それぞれに頑なさと潔さとを見せてくれる。男の美意識も突き詰めると滑稽さを伴うのではあるものの、その身の振り方、御始末、何と悲しくも美しいものであろうか。おっと、半を過ぎてしまった。行かなくちゃ。

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