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記事見出し

2005年10月6日、知的財産高裁にて、ネット記事の見出し無断配信を違法とする判決が出された。読売新聞東京本社が、インターネットサービス会社「デジタルアライアンス」に対して、インターネット上で配信された新聞社の記事の見出し部分を無断使用し利益を得ているのは違法だとして(参照)、2480万円の損害賠償と記事見出しの使用差し止めを求めていた訴訟の控訴審判決である。2005年10月6日付読売新聞の記事を見るに、判決内容は以下の通りである。

「デジタル社の一連の行為は、社会的に許容される限度を超えたもので、読売新聞東京本社の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成するというべきである。読売新聞東京本社にはデジタル社の侵害行為で損害が生じたことが認められるが、使用料について適正な市場相場が十分に形成されていない現状では、損害の正確な額を立証することは極めて困難であるといわざるを得ず、デジタル社の侵害行為によって生じた損害額は1か月につき1万円であると認めるのが相当で、読売新聞東京本社に生じた損害額は23万7741円ということができる。」(一部抜粋)

なお、著作権に関しては、「ニュース報道における記事見出しが、直ちに著作物性が否定されるものと即断すべきものではない。表現いかんでは、創作性を肯定し得る余地もないではないのであって、結局は各記事見出しの表現を個別具体的に検討し、創作的表現であるといえるかを判断すべきである。本件で主張された読売新聞のウェブサイト「ヨミウリ・オンライン(YOL)」の365個の見出しは、いずれも事件、事故などの社会的出来事、あるいは政治的・経済的出来事などを報道するニュース記事に付された記事見出しだが、個々に検討しても、いずれも各見出しの表現が著作物として保護されるための創作性を有するとはいえない。」と判決は述べているようである。

ガ島通信さんが私の意見を聞きたいそうだし、大学院生の皆さんも見ているかもしれないので、勉強の材料として少々考察してみたい。但し、判決全文を読んでいないので詳しいことは判らないで書いている。その点はご容赦頂きたい。

1.著作権法第二条第一項第一号では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」としている。この意味からすると、単なるデータ、単なる模倣、アイデア、工業製品等は著作物とはならない。また、著作権法第十条二項では「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物(=小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物)に該当しない」としている。このうち「創作性」とは「思想又は感情の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現れていれば足りる」との判決もあることから、最大限、読売新聞社の整理部の方々の個性を尊重するとすれば、今回の判決で言う「表現いかんでは、創作性を肯定し得る余地もないではない」と云うことになるかもしれない。しかし、記事の見出しがはたして「思想又は感情」を表現したものであろうか。確かに記事そのものには、そのようなものもあるかもしれないが、単に事実が判る程度のものが「思想又は感情」を表現したものとなるだろうか。知財高裁も個々に見ても「見出しの表現が著作物として保護されるための創作性を有するとはいえない」としている。新聞社の方々が「見出しですら知的、文化的精神活動の所産」と考えたいのは解らないではないが、短くすればするほど、それは単なるデータになるのであって、広告のキャッチコピーとは性格を異にするものと言えるのではないだろうか。

2.では、著作権法以外では、どのような対応があるだろうか。皆さんもご存知のように「不正競争防止法」による保護が考えられる。不正競争防止法第二条一項一号では、不正競争を「他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」としている。記事見出しが「需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示」に当たるだろうか。まず、これには無理がありそうだ。何故なら、「記事見出し」は著作権法で考察したように「単なる事実」に近いものであり、読売新聞社の固有の商品等表示とは考えられないからではなかろうか。多分、知財高裁も同様に考えたのかもしれない。不正競争防止法第三条第一項には「差止請求権」が定められており、今回の判決がこれを認めていないと云うことから類推するに、不正競争には当たらないと考えたものと思われる。

3.以上のように、「デジタルアライアンス社」の行為は、物権的な侵害行為(=著作権侵害)ではないし、債権的な侵害行為のうち不正競争による侵害行為でもない。結果として、知財高裁は債権的な侵害行為のうち幅広く「営業権」の侵害行為と見做し、民法上の不法行為の成立を認めたものとなっているようである。果たして「デジタルアライアンス社」の行為は営業利益の違法な侵害に当たるのだろうか。この点に関しては読売新聞社がYahoo等と、どのような契約を交わしているかが判らないので何とも言えないが、要約記事を読む限りは、知財高裁が「このようなサービス(「デジタルアライアンス社」のサービス)が読売新聞東京本社のYOL見出しに関する業務と競合する面があることも否定できない」と言う根拠が今一つよく判らない。何故なら、知財高裁も「使用料について適正な市場相場が十分に形成されていない現状」とも言っているからである(本当にそのような市場があるのだろうか?)。なかなかに興味深い問題であり、今後とも議論を呼ぶことになるのだろう。そろそろ、結婚式に行かねばならないので(前にも書いたが、当然ながら私のではない)、中途半端ではあるが、この辺にしておきたい。

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著作権」カテゴリの記事

Comments

ガ島です。お忙しいところリクエストにお答えいただいてありがとうございます。私ももう少し考えを進めてみました。なかなか難しくてまとまりませんが…

Posted by: ガ島通信 | Oct 09, 2005 at 00:50

dawnさん、おはようございます。
この問題について、分かりやすく説明していただき非常に勉強になりました。
毎度ながらTBできませんが、のちほど感想を含めて記事をエントリーしたいと思います。

ガ島さん、新ブログをオープンしたのですね。
コメントを受け付けていないようなので、あとでTBします。

Posted by: あざらしサラダ | Oct 09, 2005 at 10:48

ガ島さん、こんにちは
判決全文を読んでいないので不十分ですいません。ただ、若干感じるのは知財高裁の力が入り過ぎなところです(何となくですが)。何らかの形で記事見出しの経済的利益を守ろうと無理しているような気がします。新ブログにもTB送っておきます。dより

Posted by: dawn | Oct 09, 2005 at 13:09

あざらしサラダさん、こんにちは。
記事のエントリー楽しみにしてます。私のは若干不十分な気がします。独禁法の問題等もありそうな気がするのですが。
ところで、風邪が完全には抜けてないのですよ。それで、ご指摘のようにダブルコメントしてしまったのかも(笑)。dより

Posted by: dawn | Oct 09, 2005 at 13:12

dさん

すいません、トラックバック頂いていたのに「はてな」の記事を全部消してしまいました…

なんとか見出し訴訟だけは復活させたものの、次はTB送りすぎです。まだ、操作に慣れなくて申し訳ありません。

あざらしさん

コメント欄なくてすいません。TB楽しみにしています。

Posted by: ガ島通信 | Oct 09, 2005 at 13:54

ガ島さん、慣れないと大変ですね。私は慣れてても時々複数送ってしまうことがあります(笑)。dより

Posted by: dawn | Oct 09, 2005 at 15:17

(じー・・・読み中)
お?せんせーい!質もーン!!

>単なるデータ、単なる模倣、アイデア、工業製品等は著作物とはならない

ということはアレですか!「パクったモノをさらにパックンチョ」して著作権侵害にあたらないということでしょうか!するってーとあの国内でアメリカのショー・ビズで流行ってるものを「形だけ」パックンチョしてるどうしようもないレーベル(どことは名指ししませんが 笑)の出してるCDをパックンチョしてもノー問題ですか?
( ̄▽ ̄)

あーだめだ。きっと「アイデア、工業製品」のとこで特許とか意匠の話でひっかかるなー。なんせアレはどう考えてもただの銀色の円盤を包装した「工業製品」だもんなー。

マジメな話、この判決は「見出しは語数が少ないつってもうまくつけるの大変で、結構頭使ってるやんけ。他社のそれを勝手に商売に使ったらいかんだろ」という理解でよろしいのでしょうか?

オレ的に前から「これって微妙だよなあ」と思ってるのが新聞社サイトなんかの記事の引用の方法です。大体そういった記事はいずれアーカイブに入ってしまうので後でURLが変わってしまいますよね?するとせっかく原典明示・出典明示でリンクさせても(といってもほとんどのサイトは『トップページにのみリンク可』とかいうヘンテコな規約もってるんですが)後で404エラーになってしまう・・・。うーむどうしたものかと思いつつも利便性を考えて保全の意味で全文引用に踏み切らざるをえない場合が・・・。困ったもんです。

Posted by: koolpaw | Oct 09, 2005 at 19:54

koolpawさん、こんにちは。
「どうしようもないレーベル(どことは名指ししませんが 笑)の出してるCDをパックンチョしてもノー問題ですか?」との大変興味深いご質問ですが(先生風に)、お答えいたしますと、どうしようもないレーベルには本来文句は言わせたくないですな。しかし、その前の原著作権者より文句が付くので困ることになるでしょうね。
ところで、全文引用は避けなければならないのですが、URLが変わるとほんとに困りますね。最近ではリンクも最小限にしてますよ。dより

Posted by: dawn | Oct 10, 2005 at 12:27

読売が得た何よりの成果は「勝った」と伝える事ができるということかも知れないですね。いくらなんでも20数万じゃぁ被告側もこれ以上争うメリットないのでしょうし。。
しかし、一番不思議なのは、何故「和解⇒業務提携⇒Win2」という発想にならないのかなぁということ。互いが互いの価値を認めていないということか。。。

Posted by: hal* | Oct 12, 2005 at 10:28

hal*さん、こんにちは。
『何故「和解⇒業務提携⇒Win2」という発想にならないのかなぁ』、まさにその点ですね。結局のところ、新聞社もこれがビジネスにならないと思っているのではないでしょうかねぇ。何となく感情論みたいなところがあるのでしょうか。dより

Posted by: dawn | Oct 12, 2005 at 12:36

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