憑神
■浅田次郎氏の「憑神(つきがみ)」(新潮社、2005年9月20日発行)
浅田次郎氏の作品を2作ご紹介しようと思いながら、既に2週間以上が過ぎた(他にもあるけどね)。昨日も8時からアニメーション制作完了の打ち上げに行かねばならなかったので、その直前まで会社で仕事をしてしまった。あまり時間がないので、先週木曜日の社内の歓送迎会の写真でも貼り付けてすませようかとも思ったが、本のご紹介もしておかなくちゃ。月曜日は早朝から出張だし、戻ってきたら戻ってきたでイベントが続く。書類にも目を通しておかねばならないが、ちょっと現実逃避でもしてみよう。
時代は変化していく。でも、その中で変わらないもの、残さなくてはならないものもある。そんな話が「憑神」である。
別所彦四郎は直心影流男谷道場免許皆伝、昌平坂にその人ありと知られた秀才である。されど、三河安祥以来の徳川家家人、御徒士組十五番組の御徒士衆の次男。小十人組組頭の婿養子となったまではよいが、離縁され元の部屋住みの身と相成った。鬱々として酒に酔い、出会ってしまった「三巡稲荷」。手を合わせたのが運のつき。「あの祠はツキガミ様と申して、昔から触れてはならぬと伝えられておるのじゃ」。幕末の世に貧乏神に疫病神、あろうことか死神にまで取り憑かれ、「拙者は、天に選び抜かれたのかもしれぬ」などと思ってしまう彦四郎であった。時代は大政奉還、鳥羽伏見の頃である(1867年~1868年)。
この話では徳川慶喜や榎本武揚(釜次郎)は「水戸者の御大将と成り上がりの金上げ侍が、この江戸をいいようにしやがったんだぜ」なんて言われている。司馬遼太郎氏の「最後の将軍」も読まねばなァ。なんて、そんなこたァ横に置くとして、疫病神たちが面白い。「取り憑いて喜ばれるほどの者じゃござんせん」なんて言いながら、「てめぇ勝手に…呼んでおきながら、気に入らぬから帰れというのは、いくら何だってひどすぎやしませんかね」だとさ。彦四郎は彦四郎で「それも一理ある。…士道に照らして悩まねばならなかった」だもんな。「こんな美談があろうとは。ううっ、ううっ」なんて泣く厄病神。「神仏はおまえ様の思うほど偉くはないぞ」と云うことか。
「ならぬ徒花ましろに見えて、憂き中垣の夕顔や-咲いたところで実を結ばぬ徒花は、ことさら美しいものだ」、「神と戦うて死ぬるはあっぱれ本望だわい」といくのやら。「江戸っ子の心意気はちっとも錆びちゃいねえのに、侍ばかりがくすぶっちまったってことさ」、「喧嘩ってのァ、勝ち負けじゃねえ。勝ちっぷりと負けっぷりだ」なんて言われても、江戸っ子もなァ、「四の五は申しやせんが、二つ三つぐれえは言わさしていただきやす。…こればかりはご免蒙りやす。そんじゃ、ごめんなすって」といざとなりゃ逃げ足やァ早い。
しかし、彦四郎は、厄病神たちが申し訳なさげに佇むなか進んでいく。「ただ、新しき世を造るのも義の道ならば、古き世にこだわる義の道もなければおかしいと思った。すなわち、古き世の義が輝けば輝くほど、それに代わる新しき義は強くたくましいものとなるはずであった」。「徳川の世は終わる。おそらく八百年の武士の世も」。しかし、それでも忘れてはならぬことがあるのだ。何と恰好良いことか。なむなむっ! なお、上野戦争はどうだったかなどと野暮なことは考えないように。
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Comments
なんですと!!アニメ制作まで手を広げていられたのですか!
うーむ。やはりアニメは日本が世界に誇るエンターテイメントなのか?
A-KON RULES(by Foamy)
http://www.b18c5eg.com/illwillpress/!/akon.html
このA-KONとかやらに出品なさるですか?
ところで釜次郎さんですが、えらい威勢のいいこと言ってますが、目をかけていた勝海舟は「釜次郎のやつは結局新政府に出仕した。結構根性ない」とか散々なこといわれてたようですな。
これ司馬遼太郎の作品の何かで「結構函館五稜郭までいって立てこもってもうひとつの政府作るというアイデアも勝が榎本にこっそり吹き込んでおいたものかもしれない」という憶測があった記憶が。
「氷川清話」を読んで大笑いしたことがあります。いわゆる歴史上の「偉人」に関することを書いた定番・古典の書物で大笑いしたのはあとにも先にも氷川清話だけです。とんでもねー>勝海舟
Posted by: koolpaw | Oct 16, 2005 at 21:40
koolpawさん、こんばんは。
アニメ、これは「バジリスク」。ゴンゾの打ち上げに製作費の調達スキームを運営しているので呼ばれたんですよ(A-KONはどうでしょうねぇ?)。原作者のせがわさん、制作スタッフ、キャストの皆さん等々で総勢150名近い人数でした。雇用効果は大きい。
釜次郎、理想も金で買えると思っていたのでしょうかねえ。dより
Posted by: dawn | Oct 16, 2005 at 23:03
dawnさん、おはようございます。私も「憑神」さっそく読みました。歯切れの良い浅田節が炸裂でしたね。すこしオカルト風で宮部的でもあり、できれば「ぼんくら・平四郎」も登場してほしかったかと。(^^;
読後、今世を騒がしている、M上、M谷、H江の各氏に、伊勢屋がとり憑いてくれたらさぞや静かになるだろうと思いました。三巡様にお願いしましょうか。(^^;
Posted by: 高円寺 | Oct 17, 2005 at 09:28
高円寺さん、こんにちは。
仰る通り、何となく宮部みゆき風ですね。平四郎に彦四郎なんて面白い(笑)。
伊勢屋も、その三人じゃ、避けて通るかもしれませんよ(笑)。dより
Posted by: dawn | Oct 18, 2005 at 14:34
dawnさん
おはようございます。
イベント続きご苦労様です。
イベントとはこのことですかね~。「東京コンテンツマーケット2005」
最近、様々なところでコンテンツの重要性や問題点などを見たり聴いたりする機会が増えてきてます。今後がとても楽しみです。
Posted by: スターリンク | Oct 19, 2005 at 07:58
スターリンクさん、おはようございます。
最近、色んな所でコンテンツの話が出て、私も嬉しい限りです。お陰様で、私の出番も増えてますね(笑)。dより
Posted by: dawn | Oct 19, 2005 at 09:31
はじめまして、社長、最高、日本一、バンザイ
Posted by: jury | Oct 21, 2005 at 20:38
juryさん、はじめまして。
どうも有難う。dより
Posted by: dawn | Oct 22, 2005 at 09:02
イベントとはもっと大きなものだったんですね。
昨日もある経済ニュース番組でコンテンツ(アニメ)に関する特集を組んでいました。ほんと毎日のようにこの手の報道が多くなってきて嬉しい限りです。
今回のファンドについて:
ポートフォリオ型ファンドとプロデューサーの切り口だと、今後映画以外にも色々なファンド組成が期待できますね。今後が楽しみです。
今週は、様々な場でのご活動ご苦労様でした。
Posted by: スターリンク | Oct 22, 2005 at 10:47
スターリンクさん、こんにちは
有難うございます。今後も様々な展開が出てくることでしょう。楽しみです。dより
Posted by: dawn | Oct 23, 2005 at 12:10