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「ハイドゥナン」

■藤崎慎吾氏の「ハイドゥナン」上・下(ハヤカワSFシリーズ Jコレクション、2005年7月31日発行)

昨日の地震も大きかった。宮城県を中心に怪我をされた方もいらっしゃるようだ。まずはお見舞い申し上げます。陸のプレートと太平洋プレートの境界付近で起きたとの報道もある。ところで、地震が起きたときに手回し充電型のラジオは心強い。最近は会社のデスクの上に置いている。昨日も早速に使ってみた。

なお、こんなときに災害をテーマにした本をご紹介するのは心苦しいが、あくまでSFだと云うことで、ご勘弁頂きたい。前回の「愛知万博」で予告したように人類絶滅の危機をテーマにしたSFである。舞台は宮城沖とは遠く離れた琉球諸島。時代は西暦2032年、近未来SFである。小松左京氏の「日本沈没」を凌ぐ傑作と帯には書いてある(各自ご判断下さい)。それにしても、最近の地震の多さを見るに、本作品もあながち荒唐無稽とは言えないところが恐ろしい。題名の「ハイドゥナン」は「南与那国島」のことだが、どのような意味かはお読み頂くこととしよう。

本作品は日本最高の科学小説と言いながら、まず登場するのは共感覚の持ち主、伊波岳志。彼には音の色が見えたり、石の声が聞こえる。科学者まで「各地の<泣き石>や<夜泣き石>などの伝説を調べるにつけ、石の声も一様でないことがわかる。直感的に、もっと複雑な何かがあるような気がした」なんて言っている(宮部みゆきさんの「震える岩」を思い出す。そうか、「姉妹屋」のお初は共感覚者だったのか。)。

haidhunan01与那国島のヌムチ(巫女的存在)である後間柚も登場する。柚は語る、「私は神様の一部なのよ。岳志もそう。この世界に存在するすべてのものが神様の一部」と。この神様とは何なのか。ISEC(圏間基層情報雲)なのか。いずれにせよ、「我々はあまりに長い間、ISECから閉めだされてきた。…そして他の生命から言わば『仲間はずれ』にされているというような、ネガティブな気持ちを抱いていたかもしれない。それが、さらに傲慢さを助長することになった」のかもしれない。

mad01地球の危機を救うために集まった科学者たちはマッド・サイエンティスト。南西諸島沈没を食い止める「先端探査技術研究推進部会」(実際に政府の部会は長たらしい名前が好き。覚えているのが不思議、笑)のメンバーとなる。しかも、南西諸島の住民を救うと云う裏の顔まで作る。名前は「オペレーション・ヒヌカン(火の神)」。変わってる。でも、「学会から閉めだされかねないような妙なことに興味を持ち、こそこそと研究を続けている」ような科学者じゃなけりゃ、世の中変えられないかもしれないな。比較するのは申し訳ないが、アインシュタインだって変わってた。相対性理論も丁度生まれて100年だ(福江純氏の「100歳になった相対性理論」)。

南西諸島の沈没は人類全滅に繋がっていくのか。「地球の生物は過去、悪徳の横行などで神の逆鱗に触れ、洪水や火山噴火によって三回滅ぼされている。…我々は現在、第四の世界に生きているが、次の絶滅に向けた準備はすでに始まっている」と云うことなのか。学者たちは、その科学の力の上に岳志、柚の力を借りる。果たして、人類の未来は…

ところで、Arthur Rimbaudの作品は、確かに詩作期間が極めて短かったし、未来形で書かれた詩もある。本作品でも書かれているように、何か共感覚者のようにも感じられる。「聞いてくれ。おれの狂気沙汰の一つの物語だ。ずっと前からおれは、ありそうな風景をすべて手中におさめているのが自慢だった。」(「地獄の一季節」より、「錯乱 Ⅱ言葉の錬金術」の冒頭部分)とも書いている。なお、この詩にも「おれは母音の色を発明した!」とある(「地獄の一季節」は高橋彦明訳、三笠書房1969年12月31日発行)。

このほか「暗黙知」、「プレート」、「海底遺跡」だとか興味深く、言及したいところが多々あるが、これから読まれる方の興を削がないように、この辺でやめておこう。

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Comments

ハイドゥナンを先に読まれてしまいましたか・・・。 私の家では地層の下のほうに紛れていていつ発掘されることか・・・。

ところで、文庫じゃないのによく買いましたね(笑) 

Posted by: Jin | Aug 17, 2005 at 14:10

Jinさん、こんにちは
日本最高の科学小説とか言われると、買うんですね、これが(笑)。厚くて重いのは読みにくいのですが、已む無しでしょう。
Jinさんの地層深いところだと、発掘に200~300年かかるかもしれませんね(笑)。dより

Posted by: dawn | Aug 17, 2005 at 15:47

共感覚もよいですが、大至急現感覚に復帰して頂けたらと念じています。 茶々を入れるようで申し訳ありません。私にはそれほど多くの時間が残されているわけではありませんので。

Posted by: eizo isshiki | Aug 17, 2005 at 23:43

eizo isshikiさん、こんばんは
いま一つ判りませんが、私の感覚に関してはご心配なくと申し上げておきましょう。dより

Posted by: dawn | Aug 18, 2005 at 00:59

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