「サウスバウンド」
■奥田英朗氏の「サウスバウンド」(角川書店、平成17年6月30日初版発行)
「デルフィニア戦記」、NOVELSファンタジア版は挿絵がな。描いている方には申し訳ないが、私の感覚を刺激してくれない(Jinさん、どう思われますか?)。文庫版が出たときにでも、改めてご紹介することにした。と言いながら、昨晩は寝不足と相成りましたが(笑)、今日も元気に朝から犬を風呂に入れ、先ほどから来週の講義資料を作っている。そろそろ飽きてきたので、「サウスバウンド」の紹介でも書いてみよう。それにしても、若い人たちに講義をするのは楽しみだ。私も若いので(周囲から「嘘だ!」という大合唱が聞こえるような気もする。無視、笑)、若い方々と新機軸を考えていくのが面白い。どうせ日本のCoreは疲弊しきっている。Critical分野も今一。一回全て壊して、Cutting-edgeへと全精力を傾けた方が、視界が開けるかもしれない。選挙も既成政党を全て崩壊させた方が良いのかもしれない(与野党を問わず、少なくとも利権政治家は落とした方が良い)。コンテンツビジネスもメディアを含めた流通主導型のビジネス構造を変えなければ世界に勝てない。おっと、主人公の父「上原一郎」の影響で過激になってきたようだ。では、「サウスバウンド」紹介の「テンカイ」(「論拠を示せ」と云うことだそうだ)をしてみよう。
「上原一郎」は「元過激派で、今はアナーキスト」だそうだ。私の学生時代は、村上龍氏の「限りなく透明に近いブルー」に代表されるような時代。私が高校3年の昭和47年2月に浅間山荘事件が起きた(札幌冬季オリンピックもあったのでテレビに釘付け。そのせいで浪人した。と云うのは言い訳、笑)。学生運動、全共闘世代が挫折し、内ゲバへと進んだ。学生は思想的な拠り所を失った(本当にあったのかどうかは…)。限りなく透明に近いブルー状態までは行かないにせよ、マインド的には真空状態に陥った。
因みに経済も、「ニクソン・ショック」、「第一、二次オイルショック」などにより日本の高度成長時代は実質的に終焉を迎えつつあった。サラリーマンにも城山三郎氏の「毎日が日曜日」のように何とも言えない厭世的な雰囲気が漂い始めていた。その後の日本経済は田中角栄氏の「日本列島改造論」などによって、まさに創造性のない土建・成金経済へとシフトしていくことになる。言ってみれば日本はあれからずっと、過激になりきれず、がむしゃらにもなりきれず、惰眠を貪っているのかもしれない。
「体制に雇われたイヌなどと話す用意はない。俺は官が虫より嫌いなんだ」とか「人道という名のもとに支配層の価値観を世界に植えつけようとしている」だとか久々に聞くと、今頃何だと思ってしまう。ま、「国民年金なんぞ、払わんと言ったら払わん…年金制度などパンク寸前だろう」には頷きたくなる(笑)。そう、年金の抜本的改革をやると言うのなら、前にも書いたが、既受給対象者には税金で支払い、他の人々には払い込んだ分を全額返したらいい。国に面倒見てもらう必要なんかない。生活最低補償は税金で賄い、その他は自己責任で運用する方が余程効率的だ(年金の一元化なんかしたら、損をするのはサラリーマン)。
彼の表現は過激派のそれだ。でも、それはどっぷりと浸かった活動から来るものでしかないのかもしれない。自分が理想とする人間の生活への飽くなき願望を、悲しいかな過激派の言葉で語る。仕掛けられない限り、自分からは攻撃しない。彼は言う。「おれは、あんたらみたいな運動屋にはもうシンパシーを抱いていない。左翼運動が先細りして、活路を見出したのが環境と人権だ。つまり運動のための運動だ」と。
息子の「二郎」には、「戦うか、逃げるか、腹をくくれ」、「このまま済むわけはないんだろう?上原二郎、人生の正念場だな」と、息子のピンチに軽く助言。この辺り、二郎の感想が面白い。「父はずいぶんとドラマチックな青春時代を送ってきたようだ」だもんな。息子達の小学校通学にも「国民の義務など認めない」とか先生には言いながら、子供達が学校に行ったと知っても知らぬ顔。強要はしない。自由を愛している。こんな男は男で好いじゃありませんか。小学生の子供達の行動描写も面白いし、何と言っても「おかあさん」の「上原さくら」も魅力的。波照間、西表島、そして別の島へと、彼の言うところの「反権力的な“スローライフ”の実践」を求める。何だか、「ハイドゥナン」のミューガとナサみたいだな。
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Comments
私は団塊(全共闘)世代ですが、当時は「心情左翼」で、おじんになった今は「心情右翼」かも?。どちらも「心情」が付くのが寂しい限りです。(^^; けれど、おかげでどちらに偏った小説でも感情移入できます。さっそく「サウスバウンド」を読み始めました。土地勘のある中野が舞台なのはなによりです。
Posted by: 高円寺 | Aug 29, 2005 at 12:31
高円寺さん、こんにちは
心情は大切です。読み終えたら、感想を聞かせて下さい。では近々。dより
Posted by: dawn | Aug 29, 2005 at 16:18
TBありがとうございます。
奥田さんの本はこれで5作品目なんですが、喧嘩のシーンは毎回すごい痛みが伝わってきますよね!
わたくしは読書家ではないので、また何か読んだらTBさせてください。
では
Posted by: けろり~な | Sep 22, 2005 at 17:17
けろり~なさん、こんばんは
そうですね。奥田さんの作品はぐっと伝わってくるのものがありますね。TBお待ちしております。今後ともよろしく。dより
Posted by: dawn | Sep 22, 2005 at 23:12
dawnさん
間違ったTBを打ってしまいました。すいません。私には一郎の難解な運動用語が非常に新鮮でしたよ。でも、妻のさくらの顔が今ひとつ想像できませんでした。
二郎の「だぁ~っ!」ていうのは、面白いですね。有効でした。
Posted by: hakohugu | Oct 05, 2005 at 18:38
hakohuguさん、おはようございます。
学生運動の言葉には迷文が多くて、当時は違和感を持ってましたが、久々に聞くとなかなか面白いものです。「さくら」に関しては、何だか勝手にト書きを入れ想像してしまうのは、当時こんな感じのおねえさんたち(おばさん?)がいたせいでしょうか(笑)。dより
Posted by: dawn | Oct 06, 2005 at 08:45