「覘き小平治」他
■田口ランディさんの「ドリームタイム」(文藝春秋、2005年2月10日第1刷発行)
■京極夏彦氏の「覘き小平治」(中央公論新社、2005年2月25日初版発行)
■松浦寿輝氏の「もののたわむれ」(文春文庫、2005年6月10日第1刷)
今日は何だか蒸し暑い。これでも梅雨かと思ってしまう。紫陽花の花にも生気が今一つ足りないような気がする(hydrangeaさんはどうしたろうか)。こんな陽気にはやはり少し涼しい話が良いのかもしれない。京極夏彦氏の「覘き小平治」を読んでいる折、ふっと田口ランディさんの「ドリームタイム」を思い出した。松浦寿輝氏の「もののたわむれ」も一緒に書きたくなった。キーワードは「生霊」である。かと言って、「源氏物語」(夕顔の姫君が六条御息所の生霊に憑かれ、はかなく命を落とす話は有名である)や岡野玲子さんの「陰陽師」(原作:夢枕獏氏、白泉社)に出てくるような凄まじきものではない。でも、それだから余計に怖いのかもしれない。なお、「覘き小平治」、「もののたわむれ」には「生霊」と云う言葉は出て来ない。あくまで私が3作を通じて感じたものである。
実は京極夏彦氏の「覘き小平治」、読み始めたもののどこか座り心地が悪い。「小平治は、何時も然うしている」さまに何やら蟠ったものを感じて頁を捲る指が止まってしまう。漸くに読む気になったのは又市(「後巷説百物語」参照)の名が出てきたからか。そう、何となく感じる薄気味の悪さに怖気づいていたのだろう。ましてや生きているのに「生きていないようなもの」てえ存在は恐ろしい。五臓六腑にまで冷気を感じて堪えられない。小平治のまわりに徘徊する魑魅魍魎のような男と女。「どうすれば人殺しが娯しゆうなるのか、尋いてみようと思うただけだ」などと言う人斬りなんて、考えただけでぞっとする。名と実に裂け目の入った人間たちの現の世の怪談話。「生き乍ら死す幽霊小平治。死んでも戻る-。」、ほんに人は怖いもの。
これが田口ランディさんの「ドリームタイム」に出てくると(本書では「生き霊」と表記)、何やらほ~って感じにはなる。でも、その話にも「死んだ人間は怖くありません。生きている人間のほうがよほど恐ろしいものです」なんて書いてある。この本は短編集である(「生き霊」と云う言葉が出てくるのは「繭のシールド」)。私小説のような非現実的なようなどちらとも言えない雰囲気は、まさにドリームタイム。夢と現実とが交差する。その刹那に私の自分に対する執着心が露呈する。怖い話ではない。小平治とは正反対。しかし、全編が作者の描く「生き霊」か。
これが松浦寿輝氏の「もののたわむれ」になると、主人公から現実が薄れていく。最初は少し、次第に大きく薄れてしまって、どこにいるのか判らなくなる。これは生霊とは言わないのかもしれない。まさに夢幻の儚さ、時間すらも止まっているのか動いているのか分からなくなる。現実からも自分からも剥離した存在の何とも言えず、恐ろしいことか。最後の短編「千日手」で少年が最後に言った一瞬、現実などと云う壁はがらがらと壊れる。人と云うものは、果たして本当の存在なのだろうか。
言葉が物事に実体を与えることもあれば、言葉が実体を希薄化させることもある。げに人の言葉のすさまじきものか。なお、今回は3作品を「生霊」と云うテーマで紹介したが、3冊ともそれぞれに興味深い作品である。時間が有れば別々に紹介したいところである。
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Comments
どわ!またきょわい本で涼んでるんですか!
( ̄□ ̄;)
「生霊」・・・・あ、だめだ。また禁断の記憶の扉が・・・。
昔タモリの「ボキャブラ天国」というTV番組がまだタモリ倶楽部の「空耳アワー日本語版」かったころ、ビジネス・ホテルのフロントでナイト・シフトのバイトしてまして・・・。ちょうど夕飯をもう一人のバイトと食いながら見てたですよ。
したらビューティフル・サンデーの
♪さわやかーなにちよう が
♪さわやかーな生霊
になってて、白い着物で頭にも白い三角のアレ(なんていうんだろ?)つけた「生霊」がにこやかに手を振りながら河原の遊歩道みたいなとこサイクリングしてるんですよ!
二人ともそれ見た瞬間味噌汁ふきだすは、鼻にごご飯粒入るわでもーー大変!
( ̄□ ̄;)
ほんと特殊アンテナブログが更新されなくなって久しいですねー。大家さんが元気なら「うっかりさん」堀江社長も安穏とはしていられなかったろうに(爆)。
Posted by: koolpaw | Jun 19, 2005 at 09:24
koolpawさん、こんにちは
やはり日本の夏には怪談話。「日本の夏 生霊をどうぞ、クーラー要らずで快適な夏」(笑)てなところでしょうか。
それにしても大家さんが元気ならね(残念)。dより
Posted by: dawn | Jun 19, 2005 at 10:56
はじめましてヨシヒロシといいます。
このサイトを見て私も本のブログを作りました。読む本のジャンルはまったく違いますが、文章はすばらしく分かりやすいです。伝えたいこと短く簡潔に書いてくれて。ちなみに私は怖い系の本は読めません。
Posted by: ヨシヒロシ | Jun 20, 2005 at 23:28
てーへんだ!てーへんだ!ごいんきょ!!
露西亜のどっかの大将がとんでもねーことやってますぜ!
( ̄□ ̄;)
まあ、こいつをご覧くだせー!
http://www.fictionbook.ru/en/
なんてこったあ!まだ著作権切れてねーモノカキのセンセー方のもんまでおかめーなしに大盤振る舞いだああ!
『月は無慈悲な夜の女王』が!!!!おっとおおお!めりけんの怪談物のきんぐのおっしさんの本までも!とむ・くらんしーまでありやがりますぜ!こんなむごいこと許しておいていんですかい、ええ!!???
ゼラズニーのアンバーシリーズがほぼ全作・・・
お小遣いういた
( ̄▽ ̄)
あわわわわわ・・・・しーーー
Posted by: koolpaw | Jun 20, 2005 at 23:51
ヨシヒロシさん、おはようございます。
お褒め戴き、何だか恐縮です。
ヨシヒロシさんのサイトでの本の紹介を楽しみにしてます。今後ともよろしく。dより
Posted by: dawn | Jun 21, 2005 at 07:07
koolpawさん、こりゃて~へんだ。如何にかせねばなりますめえ。許諾なんぞ取ってないだろな。うゥ、しかし、koolpawさん、おぬしもヵ(素知らぬ顔)。dより
Posted by: dawn | Jun 21, 2005 at 07:13