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花見に行きたい

花見に行きたい。既に満開である。「ひさかたの ひかりのどけき 春の日に しづ心なくはなのちるらむ」(桜の花のちるをよめる きのとものり『古今集』春下、八四)と紀友則も詠んでいる。桜の花はあわただしく散っていくのに、わが身は花粉症などと心寒き状況なれば、ひらひらと舞う花びらを見るだけで心は穏やかでなくなる。どきどきするような良い天気のなか、なんと見事に咲いていることか。その下を急ぎ足で通り過ぎてゆく身のなんと寂しきことか。

已むを得ないので写真でも貼っておこう。しかし…、はなと私の間には柵がある。桜の下で静かに酒が飲みたい。

(ご近所にて本日撮影)sakura01
これだけは見ておきたい桜」(新潮社とんぼの本、1986年3月25日発行)と云う本があった。その本で栗田勇氏が「幻想のさくら考」と云う一文を書いている。そのなかに(青山墓地の桜並木のトンネルをくぐりぬけたときの奇妙な酩酊感のあとに)『私のうちに眠っている古代からの血が、闇夜にまぎれて、太古の記憶にかきたてられるかのようだった。なにが、どうして、こうしたいらだちに似た、甘く懐かしい感傷を呼びさますのだろうか。』とある。まさに人は夫々に日常生活とはかけ離れた想いを浮べることがある。

つかの間の生を見ることによって、今あるわが生を省みる。花見の宴は死と生とのはざまを感じる一瞬なのかもしれない。辻邦生氏の「嵯峨野名月記」(河出書房新社「辻邦生作品全六巻」5より)にも「そうして(花見に)浮かれる人々の心にも、日々賑やかに過ぎてゆく春の日が、ふとこの世ならぬものに思えるときがあったのであろう。」との一節がある。

なんだか「観念のなかに生きるとは、不可能事をさながら可能であるがごとく扱うことである。」(埴谷雄高氏の「闇のなかの黒い馬」より、河出書房新社、1970年6月20日初版発行)みたいになってきた。本に没入すれば、花粉症からは逃れられる。でも現実の生との間の柵を乗り越えたくなることだってあるんだ。明日は花見に行っちゃうぞ(笑)。ふん、明日は明日の風が吹くのだ。花粉症が悪化したら、また静かに様々な観念の世界に逃げ込むことにしよう。

それにしても、辻邦生氏の本を読み返したくなってしまった。花粉症のお陰とも言える(苦笑)。

【追記:なんと、今回の3冊の紹介で、昨年8月より紹介してきた本が丁度100冊になってしまった。100冊目は厳選に厳選を重ね真面目に紹介しようと思っていたのにな。まァ、こんなもんか、笑。】

忙中閑在にも桜の写真あり。

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Comments

花粉対策マスクに花粉対策ゴーグルで花見とか行くとかなりアヤシサ爆発するような気もしますが・・・
( ̄□ ̄;)

そういうワタシは大学入学まであんまり桜の季節といってもピンとこなかったです。なんせうちの実家のあたりは5月過ぎが通常で、大雪の年はつぐみだかなんだかの野鳥がつぼみ食べちゃって「桜・・・ないですから!残念!!」とかいうことも多いので(すげー田舎だな)。

大学に入学したとき満開の時期がちょうど入学式あたりで、校門からチャペルまで一直線に800mのびた通称「滑走路」(本当にゼロ戦の滑走路だったらしい)という母校の名物の道が桜でうまってる光景を見て「おお!これが世に言う桜なのか!」とカンドーしました。車に乗るようになってからは桜吹雪がほとんど吹雪みたいでキケンで「結構メーワクだな」とか思いましたが。

玉川上水に沿って桜の木がうえてあったりします、そこを初めて通ったときも田舎モンなりに「キレーだな」と感動してたんですが、いぢわるな先輩はその気配を察してすぐに「お。何かピンときたか?察しがいいな。このあたりが太宰が愛人と入水自殺した場所だ」とちゃちゃをいれてくれました。

またラヂヲ情報ですが、昔の桜は今のソメイヨイシノみたいに「むぅあんくぅあい(満開)!!」みたいに咲かず、結構ポツポツと咲いてわび・さびの世界だったそうです。その分今より長い間桜が楽しめたとか。もともとの特徴でもあったんでしょうが「パッと咲いてパッと散る」傾向は国の近代化とともに強調されたようですね。シラナンダ。つぐみについばまれて咲かないよりはかなりマシですが(爆)。

Posted by: koolpaw | Apr 10, 2005 23:58

こんばんは
30分もかけて書いていた「花の宴&ラ・トゥール展」が問題発生によりパーになりました。今日は疲れたのでもう書きませんが、koolpawさんには写真だけでもお見せしましょう。
http://homepage3.nifty.com/dh-ip/sakusaku/5_1.htm
http://homepage3.nifty.com/dh-ip/sakusaku/5_2.htm
をご覧下さい。dより


Posted by: dawn | Apr 11, 2005 00:26

白鳥の足こぎボートが写真に!!!イヤー(号泣)!!!あれには恐ろしい思い出が。

高校生の頃、なんかの行事でどっかの湖に行ったデスよ(あまりの恐怖に詳細はすっかり忘却のかなた)。強風の中をおして白鳥あしこぎボートに部活の友人と乗って湖に漕ぎ出したですよ。ところが!!!あまりの強い風にボートが流され岸に帰ってこれなくなったとです(なぜここでヒロシ調に?)。

あの白鳥型っていうかアヒル型は空気抵抗が無茶苦茶あるんですよおお。筋肉バカの高校生二人が必至に漕いでもこいでも風に流されるばかり。そらもう恐ろしい体験でございました。途中で連れのおバカは「これは・・・無理だね・・・ここで・・・この湖の上で・・・これも運命かな・・」とかいって漕ぐのあきらめちゃうし(涙)。

そーいや東京って結構桜があちこち見られますよね。首都高とか走ってると江戸川(かな?)あたりの両岸の桜並木とか綺麗でした。井の頭公園の夜の光景を見て「阿鼻叫喚」という言葉の意味を知りましたが。その近くの焼き鳥屋の二階座敷で「修羅場」という言葉の意味を知ったのは内緒です。

お花見、結構ですが酒量には御気をつけください(/_;)。

Posted by: koolpaw | Apr 11, 2005 10:53

koolpawさん、こんにちは
実は不忍池では既に風が強くなっていて、新たなボートのスタートは中止になっていました。あの写真の人たちは大変だったのではないかと思いつつ、撮影しましたね(笑)。
ご心配有難うございます。私も昨日は流石にひかえましたよ(笑)。dより

Posted by: dawn | Apr 11, 2005 11:18

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