「酔いどれに悪人なし」
■Title: The Guards(邦題「酔いどれに悪人なし」),Author:Ken Bruen,東野さやか訳,(ハヤカワ・ミステリ文庫、2005年1月31日発行)
「酔いどれに悪人なし」だってよ。お~い、ご同輩。そうそう、K君、I君、君たちだよ(The Guards じゃなくて The Securities の皆さん)。我々も悪人じゃなさそうだ。「毎日飲み過ぎてどうするんだよ。」なんて言われても気にする必要なし。「我々は悪人じゃありませんから大丈夫ですよ。何が大丈夫なのか解んないけどね。」と言えば許されるかもしれない(そんなこたァないか、笑)。出たぜアイルランドのハードボイルド!充分刺激的だ!
元警官でアル中で探偵のジャック・テイラー。年齢50代半ば【追記:40代後半の間違い】、身長6feet2inches、体重180pounds、右肩に天使の刺青あり。こんなアイルランド人がパブで『おぼろげに憶えているのは ノルウェー人とラインダンスを踊り 店の用心棒と腕相撲をし…(それからあとはナパーム弾をくらったみたいに跡形もない。)』なんて飲み方してるのは敬遠しよう(koolpawさんはしないだろうが)。でも、『わしの好きな酒とおんなじ名前なのは皮肉だな。』(私も洋酒ではそうなんですよ)
加えて、『おれはたいてい、こっそり本を持ち歩き、閑さえあればちょこちょこ読んでいた。』なんてことして『「またかよ、テイラー、まったく本の虫だな」』とか言われる由緒正しい「本好き」。そうだよ、酒に本は付き物なんだ。本好きに「神のご加護のあらんことを」(ここはアイルランドのゴールウェイ。私の場合は八百万の神だけど)。なんせ『酒が必要だ。すべてはそこから始まる。どうしても飲みたい。その欲求は切実だった。(Keith R. Ablow「抑えがたい欲望」)』など、様々なフレーズが用意されている。酒と本とくれば、音楽も欠かせない。彼は『過去に存在したすべてのショー・バンドの亡霊に耳を傾ける』、『ザ・ロイヤルズ ディクシーズ ホーダウナーズ ザ・マイアミ』。
良い会話もフレーズも多々あるが、中身は酒でも飲みながら、それぞれに読んでちょうだい。ストーリーは『……恐怖は日々明らかにする…… 現実を 時に刻まれた筋が 傷となって残る』だったり、『言葉にならない感謝の残骸』だったりってとこかな(これじゃ判らないだろうな)。私も『なんせ口の中にウィスキーの味を感じた。もうボロボロだぜ(アン・ブロナク・モーア)。』
なお、表紙については『くだらん話の相手をさせないでくれるか?』
【追記:男である私にとって(「男にとって」と一般的に書くと最近差し障りがあるようなので)、これも「Fantasy」(日本語訳は「酔狂」)のジャンルです。】
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Comments
なんか呼ばれてるし
( ̄□ ̄;)
ワタシは昔から酔っ払いの介護と送迎専門ですっ!うげー!アイリッシュで酔っ払いってまんまやんけ!いかしてるなあ。これは絶対Dawnさん、ハヤカワから山吹色の最中もらってるなあ。
酔っ払いモノ(そういうジャンルがあるのか?)でいうとやはりチャンドラーの流れをくむ一連の人々が!特にジェイムズ・クラムリーという最大級の酔っ払いが!なにしろチャンドラーへのオマージュの「さらば甘き口づけ」の酔っ払い具合とおもしろさときたら!ある種本家チャンドラーを超えた(とこそっと断言)。
あんまし他の人が言ってるの読んだりみたことないんですけど、そのチャンドラーはヘミングウエイの直系だと思うのは間違いでせうか!
( ̄□ ̄;)
へミングウエイも遺作の「海流の・・・」とか短編とかで酔っ払いぶり大爆発ってゆーか、キャパの「ちょっとピンぼけ」で大バカ親父ぶりが大暴露!!酔っ払いは連鎖する!!
日本で言うと「酒精」船戸与一もはずせませんが、やはり中島らもだ!いや、待て。。。中島らもは「悪人」じゃない?立ち読みすると書店の書架で思わずふきだして周囲から白い目で見られるような文章を書いたり、ガマ吸いにこだわったあげく、キケン薬物の書物を書き上げ、あまつさえとっつかまったりしたり、唐突にこの世からおさらばして周囲を悲しませたりするのは、それこそ悪の所業ではないのですか!
元祖酔っ払いノサカさんとの幻の小説対決も見てみたかったけど、一作は日本代表として「酔っ払いハードボイルド」を書き上げてから死にやがれとワタシは墓前で叫びたい!!
Posted by: koolpaw | Feb 20, 2005 06:19
koolpawさん、こんにちは
お呼びしましたよ。酔っ払いアイリッシュの唯一の介護人koolpawさんのコメントで、この本の紹介は完結するのでした。もちろん最中のお裾分けはありません。愛犬が内緒で食べちゃった(笑)。
でも、「チャンドラーはヘミングウエイの直系」と云うのはちょっと違うような。「酔っ払い」にも様々なジャンルがあって、両者のジャンルはちと違うような。それから、中島らも氏も「唐突にこの世からおさらば」するところが悪人じゃない所以かも(過程は許される?)。dより
Posted by: dawn | Feb 20, 2005 10:07
なるほど!さすが「人類にとって、もっともなじみ深く、歴史があり、もっとも普遍的で、もっとも安全なようでいて最悪にキケンな薬物」だけあって、酔っ払いにも色々流派があるわけですか!
( ̄□ ̄;)
いずれにしてもアルコール耐性の低い我々モンゴロイドにとっては、きゃつらののみっぷりは尋常ではなひ!そのきゃつらの中でも「酔いどれ度ナンバーワン」の呼び声も高いアイリッシュの酔っ払い・・・考えるだに恐ろしい・・・。
ところで確か村上龍っだったかのデビュー作で主人公が、酒を飲みながら本を読む女を見て「信じられん」と表現していたのを呼んで激しく同意した記憶がありますが(小説そのものはつまんないと思った記憶があり 爆)、やはり「取っ払い道」にとっては「飲酒読書」は必須科目なのでせうか!?
件の準教授は「飲酒論文書き」というけったいな習性をお持ちでありました!一人で飲むのは依存症への兆候としばしば言われますが、あーゆーかたがたには時に「飲酒読書でも飲酒文献読みでもなんでもいいから、お願いですから一人でにのんでてください!一人が依存症になるのと数人が擦り傷、切り傷、打ち身、捻挫、流血するのとでどっちがむごいですか!!」と血涙をふりしぼってお願いしたくなるときがありました。
( ̄□ ̄;)
おそるべし「酔っ払い」!!!
Posted by: koolpaw | Feb 20, 2005 21:54
koolpawさん、おはようございます。
依存症前は皆でお酒を、残念ながら依存症と相成った場合には一人で読書もしくは物書きを、と云う棲み分けが必要かな(笑)。dより
Posted by: dawn | Feb 21, 2005 07:13