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「日暮らし」

■宮部みゆきさんの「日暮らし」(講談社)

さァさ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい、鉄瓶長屋で大活躍(「ぼんくら」)の面々の登場だぃ。木戸銭がたけぇ、そんな野暮なことは言いこなしだよ、江戸っ子だろう。なかにゃ、お上に追われた幻術一座も現れるてぇ寸法だぃ。

江戸は広い、本所深川、千駄ヶ谷、芋洗坂、「俺は暇つぶしは得意だが、つくづく、待つのは不得意だな」なんて言ってる井筒の旦那(井筒平四郎)、弓之助、おでこの三太郎、政五郎などに助けられ、結構なところを行ったり来たり。ついでに川崎なんぞにも遠出する。ぎっくり腰にもなっちまう。

higurasi01ずぼらな旦那と思っていたが、これがなかなか、「分別のある大人の、あるいは役人のやるべきことではない」なんて良い味出している(ところで、別役実氏「当世もののけ生態学」では『「ふんべつ」というものは、いわゆる「付喪神」の一種であり、我々が歳をとり、体力のおとろえを感じはじめるころ、その気のゆるみにつけこんで、憑依するものとされている。』)。井筒の旦那だけじゃないが、良い台詞をよくもまあ色々と言ってくれるよ。興味深くてしょうがないじゃないか。

そうそう、話をちょっと。湊屋総右衛門、宗一郎、佐吉、夫々の思いは別として、鬼も人情に搦め取られてしまうのか。井筒の旦那の細君、佐吉の女房のお恵、煮物屋のお徳など、かわいい女性人も脇をしっかり固めてる。

ところで、お恵の里は王子の滝のそばの茶屋。確か平岩弓枝さんの「江戸の子守唄」(御宿かわせみ 2)にも「王子の滝」が出てきた。「油蝉の鳴く声が、むっと暑さの輪をひろげて行くような午後のことである。」で始まる。全く内容は違うのだが、お恵の登場場面「かなかなかな- ひぐらしが鳴き始めた。」と比べると面白い。

最後に、中間(ちゅうげん)の小平治、「連日お天道さまに照らされすぎて頭に少しばかり す が入り、…」なんて、私は好きだな。口癖の「うへえ」、どんな感じで言うのだろう。

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